高知県の郷土料理
「皿鉢(さわち)料理」は大皿に刺身、寿司、揚げ物、煮物、酢の物など海や山の幸を盛り合わせた高知県の郷土料理です。
宴会や祝事の際に供される料理として地元では欠かせないものとなっています。
「皿鉢(さわち)」とは鉢のように大きな皿を意味しており、「皿鉢料理」では有田焼や九谷焼の鮮やかな柄の大皿が使用されます。
現在では直径一尺三寸(約39cm)ほどの皿が良く使われていますが、大きなものでは三尺にもなります。
「皿鉢料理」の種類
「皿鉢料理」は主に生物(刺身)、寿司、組み物の3種類があります。
「生物(なまもの)」は土佐の海で獲れた新鮮な魚を刺身にして盛り付けます。
高知県の県魚である鰹のタタキはもとより、黒潮の恵みがもたらすイサキ、ヒラメ、タイ、ハマチなど旬の魚を並べます。
高知県を代表する郷土料理の「かつおのたたき」は「皿鉢料理」の一つとして出される事もあります。
また、「寿司」は鯖の姿寿司や巻寿司など土佐の海で獲れた魚を使ったものや山菜やこんにゃくを使った田舎寿司などがあります。
そして、「組み物」は土佐の海の幸、山の幸を使った揚げ物、煮物、酢の物、焼き物、和え物、果物などを詰め込んだ彩りも豊かな料理です。
「組み物」は「皿鉢料理」の主流ともなっており、一つの大皿に刺身、寿司、揚げ物、煮物などを「組み物」として出す事も多いです。
「組み物」には果物や羊羹なども盛り付けられており、一皿で料理の前菜からデザートまで味わえるのが特徴です。
宴会から生まれた「皿鉢料理」
「皿鉢料理」の利点はなんといっても宴会向けの料理であるという事です。
何種類もの料理を一皿に盛り付けるのでこれだけで全てが足りますし、皆で好きなものを自由に取り分ける事ができます。
宴会といえば皆で酒を酌み交わして料理をつまんで楽しくやるものですが、「皿鉢料理」はそうした無礼講的な宴会にピッタリです。
各人に作られた懐石料理のようなものとは違って、宴会で自由に動き回って席を移動した先の「皿鉢料理」を味わえます。
個別に作られた料理では各自の席に大人しく座って料理を食して会話をするのは周りの席の人だけということにもなりがちですが、「皿鉢料理」なら宴席のどこへ行っても食事ができるというわけです。
また、一皿に前菜からデザートまで詰め込まれているので、組合や地域の宴会といった場合でも婦人達も料理の手を休めて参加する事もできます。
こうした会合では大抵会場で酒や料理を味わっているのは男衆達だけで、婦人達は台所で終始料理の調理や配膳に追われ、宴会の終わり頃になってようやく台所辺りで婦人達だけで料理を食べる事が少なくありません。
しかし、「皿鉢料理」なら宴会に必要な料理がはじめから揃っているので、一品ごとに席を立って準備や配膳をする必要はありません。「皿鉢料理」は男も女も皆で楽しめる宴会を演出してくれるのです。
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