広島県の郷土料理
「カキの土手鍋」は土鍋の内側に味噌を土手の様に塗って牡蠣(カキ)、焼き豆腐、こんにゃくや白菜、春菊、せりなどの野菜を煮込む鍋料理で、広島県の郷土料理です。内側に塗った味噌は煮込むうちに徐々に崩れ始めて鍋の中に入っていきますが、自分で崩して好みの味に仕上げる事もできるのも「土手鍋」の醍醐味です。煮込む間に出し汁も減っていくので、追加の出し汁も用意しておくのもオススメです。
鍋の主役はカキですが、煮込むのが鍋といってもカキはあまり火を通し過ぎると固くなってしまうので注意が必要です。店で提供される鍋を食べる場合はあまりに長時間煮込まない内に食べた方が良いでしょう。また、自宅で作る場合には生食用のカキの場合にはさっと火を通す位で良いのですが、加熱用のカキの場合はしっかりと火を通してから食べるようにします。
主役のカキをたっぷり食べて他の具材も少なくなったら、締めには雑炊やうどんがオススメです。カキ、味噌、野菜の旨味が凝縮されたスープで食べる雑炊やうどんはこれだけでも贅沢な料理です。
カキの名産地「広島県」
広島県は牡蠣の全国生産量の約6割を占める日本一の牡蠣の産地で、牡蠣といえば広島県といわれるほどです。広島県内では宮島、江田島、呉、音戸地方など広島湾、呉湾が主産地で、穏やかな海、適度な水温、湾に流れる河川が豊富なプランクトンを生み、絶好の牡蠣の養殖場となっています。広島湾には約1万2千台のカキの養殖筏が浮かんでおり、殻は小ぶりながらも身が大きくて濃厚で美味しい牡蠣が生産されています。牡蠣の出荷は例年10月から5月頃まで行われますが、旬の時期は旨味の成分となるグリコーゲンが多くなる1月~2月です。
牡蠣は「土手鍋」の他にも朴葉焼き、昆布焼き、お好み焼き、カキフライ、カキ御飯など様々な料理がありますが、もちろん新鮮でプリプリした生ガキにレモン汁を垂らして食べるのも最高です。
「土手鍋」の由来
「土手鍋」といえば牡蠣の土手鍋を指すのですが、なぜ「土手鍋」と呼ばれるかには諸説あります。まずは、鍋の内側に味噌を土手の様に塗ることから「土手鍋」と名付けられたとの説がありますが、これが最も有名です。
次に、その昔安芸郡(広島県)に住んでいた「土手吉助」というカキの行商人が大阪にカキを売りに行った際に、カキを使った鍋料理を作ったので「土手鍋」と呼ばれるようになったとの説があります。
そして、カキを運んだカキ船が土手の下でカキ鍋を売っていた事から、「土手下の鍋」、「土手鍋」と呼ぶようになったとの説です。カキの養殖は室町時代から行われており、江戸時代になってからは毎年旬の時期にはカキを満載した「カキ船」が広島から大阪へカキを売りにきていました。カキ船はカキをそのまま売るだけでなく、橋のたもとの土手下に繋がれた場で「カキ鍋」を提供していました。
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