青森県の郷土料理「せんべい汁」とは
「せんべい汁」は鶏や豚で出汁をとった醤油味のスープにキャベツ、ごぼう、人参、きのこ、ねぎなどの野菜に豆腐、麩や魚介類などに専用の南部せんべいを入れて煮込んだ汁物又は鍋料理で、青森県南部の八戸地方を中心とした郷土料理です。
鍋に季節の野菜を小麦粉を練った生地を煮込む岩手県の郷土料理「ひっつみ」と似ていますが、「ひっつみ」の生地の代わりに小麦粉と塩でできた南部せんべいを使うのが特徴です。
青森県南部の八戸市内には「せんべい汁」を提供する店は100店舗以上あるといわれており、「せんべい汁」は八戸、しいては青森県を代表する郷土料理として人気があります。
南部せんべいにもいろんな種類がありますが、「せんべい汁」には煮込んでも溶けにくい「おつゆせんべい」もしくは「かやきせんべい」と呼ばれる専用のものを使います。
「おつゆせんべい」と「かやきせんべい」は堅焼きの煎餅で溶けにくくなっていますが、「せんべい汁」を作る際には必ず他の具材が煮えて出来上がる直前に入れるようにします。
はじめから入れてしまうといくら専用のせんべいといえども柔らかく溶けてしまうからです。
直前に入れて少しだけ煮込む事で具材とスープの旨味を吸い込み、しかも煎餅のサクッとした食感が残って、なんともいえぬ美味のせんべいになります。
「せんべい汁」の発祥・由来
「せんべい汁」は江戸時代後期の天保の大飢饉の頃に八戸藩内で生まれたといわれています。
飢饉の食料不足が原因で生まれたのかは定かではありませんが、東北地方の八戸地方では当時より米よりも栽培しやすい麦や蕎麦の栽培が奨励されていました。
東北地方は寒冷地のために元々麦や蕎麦などの栽培が盛んで、「ひっつみ」の様に米以外の穀物を中心とした食文化が広がり、「せんべい汁」もその影響を受けて誕生したと考えられます。
八戸では「麦せんべい」や「蕎麦せんべい」が作られていましたが、収穫したありあわせの野菜に川で獲れたウグイと呼ばれる魚やカニ、山で狩った雉やウサギなどを鍋で煮込み、せんべいをちぎって入れたのが「せんべい汁」のはじまりだといわれています。
コメント