へぎそばとは?
へぎそばは、新潟県魚沼地方発祥の伝統的な郷土料理で、主にそば粉と海藻の一種である布海苔(ふのり)をつなぎに使った独特の蕎麦です。
魚沼地方は古くから織物産業が盛んでしたが、小麦の栽培が難しい地域であったため、蕎麦のつなぎには手に入りやすい布海苔が使われるようになりました。この布海苔の粘りが、へぎそば特有のツルツルとした喉ごしと強いコシを生み出しています。
特徴的な盛り付け「へぎ」

へぎそばの名前は、提供に使われる木製の器「へぎ」に由来します。へぎは幅約30cm、長さ約50cmの木の板を剥いで作った四角い器で、その上に一口大に丸めた蕎麦を「手繰り(てぐり)」という技法で美しく並べます。
この盛り付け方法は、魚沼地方の織物文化の所作に由来しており、糸を紡ぐ手の動きが蕎麦の形に活かされていると言われます。
食文化としての位置付け
へぎそばは、古くから地域の祝い事や冠婚葬祭など特別な席で振る舞われる料理でした。現在では、観光客にも人気の新潟名物として知られ、地元のそば店や観光施設で広く提供されています。
海外での紹介
海外では一般的に“Hegi Soba”と表記されます。観光案内や英語メニューでは、
cold soba noodles made with seaweed glue (funori) served on a wooden tray called ‘hegi’
のように説明され、布海苔を使う独自性と器の特徴が併せて紹介されます。
へぎそばの特徴
1. 食感


へぎそば最大の特徴は、つなぎに海藻の布海苔(ふのり)を使うことによって生まれる、他のそばにはない非常に強いコシとツルツルとした喉ごしです。
布海苔の持つ独特の粘りが蕎麦に滑らかさを与え、噛むと弾力のある食感が楽しめます。これはもともと織物の糊付けに使われていた布海苔を応用したもので、魚沼地方ならではの知恵が詰まっています。
2. 見た目

へぎそばは、幅広で長方形の木製器「へぎ」に盛られます。蕎麦は一口大に丸めた「玉」の形で並べられ、この盛り付け方法は手繰り(てぐり)と呼ばれます。
手繰りの動きは、織物の糸を紡ぐ手振りや手びれに由来しており、整然と並べられた蕎麦はまるで工芸品のように美しく、食べる前から目を楽しませてくれます。
3. 薬味の特徴
かつては新潟魚沼地方でわさびが手に入りにくかったため、からしが薬味として使われてきました。からしはつゆに溶かさず、蕎麦の上に直接のせて食べる独特のスタイルが特徴です。
現在では、わさびや刻みネギ、海苔、すりごまなども一般的な薬味として添えられ、好みに合わせた味の変化が楽しめます。
4. 他のそばとの違い
へぎそばは、材料・食感・盛り付け・薬味のいずれもが他地域のそばと異なります。特に布海苔による食感とへぎへの美しい盛り付けは唯一無二です。
項目 | へぎそばの特徴 | 他のそばとの違い |
---|---|---|
つなぎ | 海藻の布海苔。粘りで強いコシと滑らかな喉ごしを実現 | 一般的には小麦粉や山芋。十割そばはつなぎなし。 |
食感 | ツルツルで滑らか、噛むと弾力がある | 戸隠・出雲など十割そばは粉の香りと風味が強い |
盛り付け・器 | 四角い木の器「へぎ」に一口大の玉状で美しく並べる | ざるやせいろ、割子など地域ごとに様々 |
薬味 | 昔はからし中心。現在はわさび・ネギ・海苔なども使用 | 多くの地域ではわさびが主流 |
風味 | 布海苔のほのかな海藻風味が感じられる | 他はそば粉本来の香りがより際立つものが多い |
へぎそばの由来と名前の意味
「へぎそば」という名前の由来
「へぎそば」の名称は、そばを盛り付ける木製の器「へぎ」に由来します。
「へぎ」とは、木の板を薄く剥ぐ(はぐ)ことから生まれた言葉で、木目に沿って丁寧に削ぎ取った板を使って作られます。この技法によって作られる器は、表面が滑らかで水切れが良く、そばを盛るのに最適です。
そのため、「へぎそば」とは、「へぎ」という器に盛られたそばのことを指します。
「へぎ」の語源(片木=木の板を剥ぐ意)
「へぎ」は漢字で片木とも書かれ、もともとは「へぎ板」を意味します。へぎ板は、木を割るのではなく木目に沿って薄く削ぐことで作られ、その木肌の美しさと滑らかさが特徴です。こうした伝統的な木工技術が、器としてのへぎに生かされています。
盛り付け文化と織物産業の関わり
へぎそばは、そば粉と布海苔(ふのり)をつなぎにした麺を一口大に丸めて器に並べます。この盛り付け方法は「手振り」または「手びれ」と呼ばれます。
この動きは、新潟県魚沼地方で盛んだった織物産業に由来し、糸を撚り紡ぐ作業(かせぐりなど)の手の動きに似ています。つまり、へぎそばは盛り付けの形そのものが織物文化と深く結びついた料理なのです。
さらに、そばのつなぎに使われる布海苔も、かつては織物の糊付けに利用されていた海藻であり、器・盛り付け・材料のすべてに織物産業の技術と文化が反映されています。
へぎそばの歴史
発祥と考案者
へぎそばは新潟県十日町市で生まれました。その原点は1922年(大正11年)、初代・小林重太郎が創業した「小嶋屋総本店」にあります。
当時、魚沼地方では小麦の栽培が難しく、そばのつなぎには山ごぼうの葉や自然薯が使われていました。そんな中、小林は織物産業で糊付けに利用されていた海藻布海苔(ふのり)に着目し、「これをそばのつなぎに使えば、より滑らかでコシのある麺ができるのではないか」と試行錯誤を重ねました。こうして完成したのが、現在まで受け継がれる布海苔つなぎのへぎそばです。
織物文化との融合
魚沼地方は古くから織物の産地であり、布海苔は緯糸を張る際の糊として欠かせないものでした。この織物産業の副産物ともいえる布海苔を食文化に転用したことは、地域ならではの発想でした。布海苔の粘りは、へぎそば独特のツルツルの喉ごしと強いコシを生み出し、他のそばとの差別化につながりました。
ハレの日の料理として
へぎそばは誕生当初から、結婚式・節句・お庚申様(こうえんさま)・盂蘭盆など、地域の祝い事や祭礼で振る舞われるハレの日の特別料理でした。
農家や地元の人々は自家製のそば粉を石臼で挽き、布海苔をつなぎにして作り、贈答品としても用いました。
昭和期の普及と全国展開
- 1948年(昭和23年):皇室献上の栄誉を受け、名実ともに地域の代表料理としての地位を確立。
- 1960年代(昭和40年代):小嶋屋総本店が法人化し、乾麺製造を開始。保存性と品質の安定化により、贈答用やお土産として全国に普及。
- 観光との結びつき:新潟県内外の観光施設や飲食店で提供され、観光資源としての役割を担うようになりました。
現代の展開
2022年、小嶋屋総本店は創業100周年を迎え、伝統の製法を守りつつ新しいメニューや提供方法にも挑戦。県内各地のそば店でも提供され、観光客や地元の人々に親しまれています。
今日のへぎそばは、新潟の織物文化と食文化の融合という歴史的背景を持つ料理として、地域の誇りと観光の目玉の両方を担っています。
材料と具
基本材料

へぎそばの主原料はそば粉と布海苔(ふのり)です。
布海苔は海藻の一種で、かつて織物産業において緯糸(よこいと)の糊付けに用いられていました。乾燥した布海苔を銅なべで弱火で約1時間ほど煮て緑色に溶かし、それをそば粉と合わせて練り込みます。この布海苔の粘りが、へぎそば特有のツルツルとした喉ごしと強いコシを生み出します。
配合の目安
伝統的な配合は、そば粉8割:布海苔2割が基本です。
この割合によって、滑らかな舌触りとしなやかな弾力がバランスよく実現されます。布海苔の割合を増やすとコシや風味がさらに強まりますが、その分コストも上がるため、店や家庭によって調整されます。
薬味・添え物
かつて魚沼地方ではわさびが手に入りにくかったため、からしが主な薬味として使われてきました。からしはつゆに溶かさず、そばの上に直接のせて食べる独特のスタイルです。
現代では、一般的なわさびのほか、刻みネギ、海苔、すりごまなども薬味として添えられます。薬味はそばの風味を引き立て、地域や店ごとの個性を感じさせます。
へぎそばの作り方(家庭版レシピ)
家庭でへぎそばを作る場合でも、独特のツルツルとした喉ごしと強いコシを再現するためには、布海苔の下ごしらえと盛り付けが重要なポイントとなります。
1. 布海苔(ふのり)の下ごしらえ
- 乾燥布海苔を銅鍋に入れ、弱火で約1時間かけてゆっくり煮込み、鮮やかな緑色になるまで加熱します。
- 銅鍋を使うのは、銅との化学反応によって布海苔の色がより鮮やかになるためです。
- 繊維質が気になる場合は布で濾しますが、食感や風味がやや変わるため、好みで調整します。
2. 生地作り
- そば粉8割と、煮て溶かした布海苔2割(重量比)を用意します。
- そば粉と布海苔をしっかりと混ぜ合わせ、腕の力と体重をかけてリズム良くこねることで、生地が滑らかで弾力のある状態になります。
3. 延ばし・切り方
- 生地を3〜5mm程度の厚さに均一にのばします。
- 包丁は引かず、まっすぐ下に押すように切ることで麺の断面が整い、茹で上がりが均一になります。
- 切る際は、まな板の位置を少しずつずらして、太さを一定に保つよう心がけます。
4. 茹で方
- 大きめの鍋に3リットル以上の沸騰したお湯を用意し、そばを軽くほぐしながら投入します。
- 2〜3分ほど茹で、1〜2本取り出して硬さを確認します。
- 茹で上がったら、すぐに冷水(できれば氷水)で2〜3回洗い、ぬめりをしっかり取りながら麺を締めます。
5. 盛り付け(へぎへの美しい盛り方)
- 茹でたそばを一口大の玉状にまとめます。
- この盛り付け技法は「手振り(手びれ)」と呼ばれ、魚沼地方の織物文化に由来する所作です。
- 「へぎ」と呼ばれる四角い木製の器に、玉状のそばを整然と並べます。形や間隔を揃えることで、芸術的な見た目が完成します。
ポイント
- 布海苔の色と粘りがへぎそばの命。可能であれば銅鍋を用意すると、本場に近い色味と食感を再現できます。
- 盛り付けは味わいだけでなく見た目の印象を大きく左右します。動画や写真を参考に練習すると完成度が上がります。
美味しい食べ方と食文化
薬味・つゆとの相性

へぎそばは、一口分ずつ盛られたそばを取り、かつお節や昆布をベースにした甘辛い醤油味のそばつゆにたっぷり浸して食べるのが基本です。
薬味には刻みネギ、ごま、からしが伝統的で、特にからしはそばの上に直接のせて食べる独特のスタイルが特徴的です。これは、魚沼地方ではわさびの栽培が難しく、入手しにくかった時代に生まれた食習慣です。近年ではわさびを提供する店も増え、好みに応じて選べます。
この薬味やつゆとの組み合わせが、布海苔特有の滑らかな喉ごしとほのかな海藻の風味を引き立てます。
冷やしと温かい場合の違い
へぎそばは基本的に冷たいそばとして提供されることが多く、この場合はツルツルとした喉ごしと弾力のあるコシが際立ちます。
一方、温かいへぎそばも存在し、熱によってそばの香りや布海苔の旨みが引き立ちますが、コシはやや柔らかくなります。温かい場合は風味が変化しやすいため、提供後は早めに食べるのがおすすめです。
郷土料理としての食文化
へぎそばは新潟県魚沼地方で、祝い事や祭りなどのハレの日に欠かせない特別な料理として親しまれてきました。結婚式、節句、お庚申様、盂蘭盆などの行事では、大きなへぎを囲み、多人数で分け合いながら食べる文化が根付いています。
現代では観光客にも広く知られる郷土料理となり、小千谷市や十日町市の名店では、美しい盛り付けとともに提供されます。さらに、文化庁から「100年フード」にも認定され、地域の食文化を象徴する存在として全国的にも注目されています。
この節で、へぎそばが味覚的な魅力だけでなく、地域の人々の暮らしや行事に深く結びついた料理であることを示しました。
有名店と本場の味
越後十日町 小嶋屋総本店

1922年創業、新潟県十日町市に本店を構える老舗で、へぎそば発祥の店として全国的に知られています。石臼挽きのそば粉100%に、つなぎは布海苔のみという伝統製法を守り続け、なめらかな喉ごしとしっかりした歯ごたえが特徴です。漆塗りの「へぎ」に整然と盛り付けられ、甘めのそばつゆと、からしを中心に据えた薬味が味の決め手。県外や海外からの観光客も多く訪れる、魚沼地方の食文化の象徴的存在です。
新潟駅前 須坂屋そば
小千谷市郊外に位置し、自家製粉と地元産そば粉を使ったへぎそばが評判の店。布海苔と小麦粉を微調整しながら配合し、つるりとした食感とのどごしの良さを実現しています。そば茹でには井戸水を使用し、ほのかな甘みが感じられるのも特徴。天ぷらや季節の野菜料理も好評で、落ち着いた雰囲気の中で本場の味が堪能できます。
その他の名店
十日町市や小千谷市周辺には数多くの老舗が点在し、各店が布海苔の配合やそば粉の産地にこだわっています。
- 角屋:水を一切使わず布海苔だけでつなぐ濃厚なコシのそばが名物。
- まるいち:そば粉100%で布海苔の使用を控えめにし、そばの香りを際立たせた一品を提供。
地域ごとの味の違い
地域 | 特徴 | つなぎとそば粉の配合 | 味わい・食感の特徴 |
---|---|---|---|
十日町市 | 発祥地として多くの老舗が集まる | そば粉100%+布海苔単独または微量の小麦粉 | ツルツルの喉ごしと弾力あるコシ |
小千谷市 | 自家製粉や自家栽培の店が多い | 布海苔+小麦粉の併用もあり | 布海苔の糊質感を活かした滑らかさと水の甘み |
魚沼地方 | 祝い事で振る舞われる伝統料理 | 布海苔使用 | 味が濃くしっかりとしたコシ |
新潟市周辺 | 薬味や提供スタイルに地域差あり | 布海苔+小麦粉 | 薬味の種類やつゆの味で個性が出る |
現地で食べる魅力
- 新鮮な布海苔を使った、独特の食感と美しい盛り付けを目と舌で味わえる。
- 地元の水や気候がそばの風味に影響し、地域ごとの個性が感じられる。
- 祝い事や地域行事の場で供されるため、食を通じて地域文化に触れられる。
- 各店ごとに工夫されたそばつゆや薬味で、伝統と革新の両方を体験可能。
- 木製の「へぎ」に盛られたそばは写真映えし、旅の思い出を彩る。
通販・お取り寄せ情報
通販で楽しめるへぎそばの種類
乾麺タイプ

保存性に優れ、常温で長期間ストックできるのが魅力です。新潟の名店が手がける乾麺は、布海苔(ふのり)をつなぎに使い、本場さながらのツルツルとした喉ごしと強いコシを再現。
代表例として「越後十日町 小嶋屋」や「小千谷 わたや」の乾麺セットがあります。
半生麺(生そば)タイプ
生に近い風味と食感を楽しめるのが特徴で、冷凍便で届くことが多く、茹でるだけで本格的な味わいが再現できます。
特に「小嶋屋総本店」の半生へぎそばセットは、つゆ付きで手軽に本場の味が楽しめる人気商品です。
おすすめの通販サイト・ブランド
- 小嶋屋総本店オンラインショップ
生麺・乾麺ともにラインナップがあり、皇室献上の実績を持つ品質で知られます。石臼挽きそば粉と布海苔のみの伝統製法。 - 新潟直送計画
「越後十日町 小嶋屋」や「越後小千谷 わたや」のへぎそばを取り扱い、ギフト用セットや詰め合わせも充実。 - 楽天市場・Yahoo!ショッピング
多様な価格帯とブランドから選べ、ポイント還元やキャンペーンでお得に購入可能。
家庭で本格的に楽しむポイント
- 布海苔の持ち味を活かす
茹でる際は表示時間を守り、茹で上がり後は冷水でしっかり締めることで、コシと喉ごしが際立ちます。 - 盛り付けで雰囲気アップ
一口大に丸める「手繰り(てぐり)」は難易度が高いものの、形を整えて器に並べるだけでも雰囲気が出ます。 - 薬味やつゆの準備
からし、刻みネギ、海苔など本場に近い薬味を用意し、甘めで出汁の効いたそばつゆを添えると現地さながらの味わいに。
まとめ
へぎそばは乾麺・半生麺のいずれも通販で手軽に入手可能です。特に小嶋屋総本店やわたやの商品は品質・評判ともに高く、家庭でも新潟本場の味を楽しめます。茹で方や盛り付け、薬味の工夫によって、その魅力を最大限引き出せます。
他地域のそばとの比較
へぎそばを、代表的な各地のそば(戸隠そば/出雲そば/深大寺そば/わんこそば/信州そば/越前そば)と、材料(つなぎ)・食感/風味・盛り付け/提供・歴史/発祥の観点で比較します。
そばの種類 | 材料(つなぎなど) | 食感・風味の特徴 | 盛り付け・提供方法 | 歴史的背景・発祥地域 |
---|---|---|---|---|
へぎそば | そば粉約8割+布海苔(海藻)つなぎ | 強いコシ、ツルツルののどごし。布海苔のほのかな海藻風味 | 木製の四角い器「へぎ」に、一口大の「玉」を整然と盛る | 新潟県魚沼地方。織物産業の布海苔を糊付けから転用した伝統食 |
戸隠そば | 十割(つなぎ無し)や殻ごと挽く店も | 香り高くコシが強い。やや黒めで素朴な風味 | 細長い麺をざるで提供することが多い | 長野県戸隠。修験の地に根付く門前文化 |
出雲そば | つなぎ無し十割が多い。皮ごと挽く | 黒っぽく香ばしい。香り・コシが強い | 割子(小さな丸皿)を重ねて供する | 島根県出雲。神事や伝統行事と関わり深い |
深大寺そば | そば粉に小麦粉などのつなぎ(店で差) | 旨味とコシのバランス。良質な湧水が持ち味を支える | 固定様式なし(各店で多様) | 東京都調布市・深大寺。江戸期の門前そば |
わんこそば | 小麦粉等でつなぐ | コシしっかり。少量を次々お椀で供され“食べ放題”体験型 | 小椀で連続提供する独特の作法 | 岩手県。もてなしの郷土食として発展 |
信州そば | いわゆる二八(そば粉7〜8:小麦粉2〜3) | 香り高く、コシと喉ごしの総合バランスが良い | ざる/せいろが一般的 | 長野県全域。全国区の産地ブランド |
越前そば | 粗挽き粉+小麦粉少量 | 黒めで香り強い。硬めに茹でてしっかり食感 | ざるやお盆に平たく盛ることが多い | 福井県。香りとコシを重視する地場文化 |
比較のポイント(要約)
- つなぎの違い:へぎそばは唯一の海藻つなぎ(布海苔)。戸隠・出雲は十割が多く粉の香りが前面に。信州は二八でバランス型。
- 食感・風味:へぎはツルツル&強コシが際立つ。越前は粗挽きで香りと歯切れ、深大寺は湧水が持ち味。
- 盛り付け:へぎの木器+玉盛り、出雲の割子、わんこの小椀連続など、提供様式の個性が明確。
- 歴史・文化:へぎは織物文化の転用が起点。戸隠・深大寺は門前文化、出雲は神事、わんこはもてなしの作法が背景。
英語での紹介方法(観光向け)
1. 英語名と基本説明
海外向けには固有名詞として Hegi Soba をそのままローマ字表記で使用し、後に短い説明を添えるのが効果的です。
短文例
Hegi Soba is a unique style of cold buckwheat noodles from Niigata, Japan, made with funori seaweed as a binding ingredient and served on a wooden tray called “hegi”.
2. 観光案内用の説明文例
例①(パンフレット用)
Hegi Soba is a traditional specialty from the Uonuma region of Niigata Prefecture. The noodles are made with buckwheat flour and funori (a type of seaweed) which gives them a silky texture and firm bite. They are beautifully arranged in bite-sized portions on a wooden tray called a hegi. Often enjoyed during festivals and special occasions, it’s a must-try dish when visiting Niigata.
例②(観光サイト用)
Try Hegi Soba, Niigata’s signature buckwheat noodles bound with funori seaweed. Served on a traditional wooden board called a hegi, these noodles have a smooth, slippery texture and a subtle ocean aroma. Traditionally served with mustard instead of wasabi, but wasabi and green onions are also common today.
3. メニュー表記例
短文メニュー英語
Hegi Soba – Cold buckwheat noodles made with funori seaweed, served in bite-sized portions on a wooden tray (hegi). Comes with dipping sauce and condiments (wasabi, green onion).
観光客向け丁寧表記
Hegi Soba – A Niigata specialty. Buckwheat noodles are bound with a unique seaweed called funori, giving them a silky smooth texture. Served beautifully on a wooden hegi tray.
4. 外国人に説明する際のポイント
- 固有名詞+シンプルな説明
- 「Hegi Soba」→ “cold buckwheat noodles with seaweed” のように短く。
- 食感表現を具体的に
- “silky texture” “smooth and slippery” “firm bite”。
- 文化的背景を一言加える
- “Festive dish” “Local tradition” など。
- 写真とセットで伝える
- 盛り付けの美しさは視覚的にも大きな魅力。
- 薬味のユニークさを添える
- “Traditionally served with mustard instead of wasabi” は印象に残りやすい。
まとめ:へぎそばの魅力と文化的価値
へぎそばは、新潟県魚沼地方で生まれた織物文化と食文化が融合した独特の郷土そばです。
最大の特徴は、つなぎに布海苔(ふのり)という海藻を使うこと。これにより、他のそばにはない強いコシとツルツルしたのどごしが生まれます。布海苔はもともと織物の糊付けに用いられていたもので、その産業的背景が料理に生かされた稀有な例です。
盛り付けも独自で、四角い木製の器「へぎ」に一口大の玉状に整えたそばを美しく並べる「手振り(手びれ)」の技法は、糸を紡ぐ動作に由来します。この視覚的な美しさは、味と同じくらい強い印象を与えます。
歴史的には1922年、小嶋屋総本店初代の小林重太郎が布海苔を使ったそばを完成させたのが始まり。以降、祝い事や地域行事のハレの日の料理として親しまれ、昭和期以降は県内外に広まり、観光資源としても重要な存在となりました。
材料はそば粉約8割と布海苔2割が基本。薬味は昔ながらのからしや刻みネギ、海苔、わさびなどが用いられます。家庭で作る場合も、布海苔の下ごしらえや盛り付けの工夫で本場の雰囲気を再現できます。通販では乾麺や半生麺も入手でき、全国どこからでも楽しめます。
他地域のそば(戸隠そば、出雲そば、越前そばなど)と比較しても、海藻つなぎ・玉盛り・織物文化との結びつきという3つの特徴が際立ちます。海外では「Hegi Soba」として紹介され、観光客には“silky texture”や“served on a wooden tray”といった表現でその魅力が伝えられます。
総じて、へぎそばは地域の歴史・産業・美意識が一体となった食文化の結晶です。現地で味わう一杯は、味覚だけでなく、その背景にある物語や職人の技、地域の誇りまでも体験させてくれます。
参考文献一覧
- 農林水産省「うちの郷土料理 ~次世代に伝えたい大切な味~ 新潟県 へぎそば」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/hegisoba_niigata_niigata.html - 新潟県観光協会「新潟の食文化 へぎそば特集」
https://niigata-kankou.or.jp/feature/hegisoba/top - 新潟県十日町市観光協会「へぎそば」紹介ページ
https://www.tokamachishikankou.jp/special/hegisoba/ - 小嶋屋総本店 公式サイト
https://kojimaya.co.jp - 小嶋屋総本店「こだわり・歴史」ページ
https://kojimaya.co.jp/kodawari/
https://kojimaya.co.jp/kodawari/rekishi.html
https://kojimaya100th.jp - わたや 公式サイト
https://www.watayasoba.co.jp/hyakunenfood/ - 越後十日町 小嶋屋(乾麺・半生麺通販)
https://www.hegisoba.net - Made in Local「新潟県魚沼地方の食文化」
https://madeinlocal.jp/area/niigata/knowledge/001 - DELISH KITCHEN「新潟名物 へぎそば」
https://delishkitchen.tv/articles/2228 - How To Niigata「へぎそばの魅力」
https://howtoniigata.jp/article/jimoto/39592/ - 越後十日町小嶋屋の歴史とこだわり
https://story.nakagawa-masashichi.jp/65885 - 越後小千谷地域のそば文化記事(Kurashiru)
https://www.kurashiru.com/articles/85235816-21ac-477a-bab5-035b856f0a82 - 日本郷土料理協会「へぎそば」
http://kyoudo-ryouri.com/ja/food/603.html - 水の文化研究所「布海苔とそば文化」
https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no76/09.html - sobaweb.com「へぎそばの文化と特徴」
https://sobaweb.com/magazine/200958/20090514173816.html
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