宮崎県の郷土料理「冷や汁」とは
「冷や汁」は魚のすり身に味噌やゴマを混ぜてだし汁や水で伸ばし、輪切りにしたきゅうり、豆腐、大葉などを加えてご飯にかけて食べる宮崎県の郷土料理です。
どんな料理かと一言でいえば「汁かけ飯」なのですが、地元ではれっきとしたこだわりもあって意外と奥が深い料理です。
県外の人は「ひやじる」と呼びますが、地元では正式には「ひやしる」と呼ぶらしく、何やら「ひやじる」では上品ではないそうです。
宮崎県では全域で郷土料理として昔から食べられていますが、「冷や汁」との名前のごとく冷やして食べるので、主に夏の定番料理として親しまれています。
暑い夏の日の食欲のない時は、冷えていて汁物のようにしてスルスルと食べる事ができる「冷や汁」は長らく宮崎の人達の食生活を支えてきたのです。
「冷や汁」は家庭料理として地元の人達だけ食べられていたので、あまり外で食べられる様な料理ではなかったのですが、最近では宮崎の郷土料理として食堂や料理屋でも食べられる様になり、居酒屋で飲んだ後の締めの料理としても人気があります。
宮崎県といえば「チキン南蛮」、「地鶏の炭火焼」などが有名ですが、地元でも郷土料理といえば真っ先に名前が挙がるのが「冷や汁」なのです。
「冷や汁」の発祥・由来
「冷や汁」は宮崎の郷土料理として定着していますが、元々は全国的に広まっていた料理でした。
鎌倉時代の「鎌倉管領家記録」には「武家にては飯に汁かけ参らせ候、僧侶にては冷汁をかけ参らせ候」と書かれていました。
鎌倉時代以降は僧侶によって全国に広まったのですが、各地の食文化、風土、気候など様々な条件の中で宮崎にはあったようで次第に定着していきました。
暑い夏場の農作業の合間に農民達が簡単に素早く食べられる料理として「冷や汁」が好まれました。
特に朝の忙しい時には前日の残りの麦飯に味噌を水で溶かしてかき込んでいたようです。
また漁師の家では忙しい漁の仕事の合間に獲れた魚の身を潰して「冷や汁」にして食べたのではないかと思われます。
「冷や汁」の作り方・レシピ
「冷や汁」は宮崎の郷土料理といえども統一した材料や作り方があるわけではありません。
郷土料理でもあり家庭料理でもある「冷や汁」には百の家庭には百の「冷や汁」、百の店には百の「冷や汁」があります。
元々は家庭料理なので「冷や汁」を出す店が百もあるかはわかりませんが、家庭ではそれぞれ材料も作り方も違います。
家庭の味はその家だけの独自の味として母や姑から代々伝えられてきたものです。
具材である魚一つとってみても、鯵、いりこ、鯛、鰹、とびうお、カマスなど様々です。
また、「冷や汁」をかけるご飯ですが、「冷や汁」ですから正式には冷えたご飯だそうですが、最近では温かいご飯にかけて食べる事も多いです。
温かいご飯をわざわざ冷やして出す店もありますが、残り物のご飯に「冷や汁」をかけて食べた昔と違って、店の料理として出す場合には温かいご飯の場合が多いです。
作り方は様々なのですが、「冷や汁」の美味しさのポイントはやはり「炙り」にあります。
魚のすり身は当然焼いて炙ったものですが、何より大事なのがすり身とゴマを味噌をすり鉢で合わせて「炙る」事です。
すり鉢に十分に伸ばした味噌ダネをすり鉢ごと火で炙ることで魚、ゴマ、そして味噌の香ばしさが引き出されて食欲をそそる旨味が出てきます。
すぐに食べる場合にはそのままきゅうりや豆腐などの具を加えて混ぜるのですが、炙った味噌ダネを茶碗一杯分の分量ずつに丸めて分けて冷蔵庫に入れておけば、いつでも「冷や汁」を食べることができるというわけです。
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