三輪そうめん

奈良県三輪地方の郷土料理

「三輪そうめん」は極寒期に小麦粉を練って手延べで細く伸ばして精製した素麺で奈良県三輪地方の郷土料理です。その歴史は古く奈良時代にまで遡り、大神神社の第12代宮司である狭井久佐の次男穀主が飢饉を凌ぐ保存食として作ったのが起源といわれています。これが素麺の原型となる麦縄(むぎなわ)で、小麦を挽いて棒状に練り乾燥させたものでした。三輪地方は小麦の栽培に適した土地で、三輪山から流れる巻向川と初瀬川からの豊富な水もあり、小麦の栽培が盛んに行われる様になりました。江戸時代になると伊勢参りが盛んになり、三輪地方は宿場町として栄える様になりました。宿泊客へは「三輪そうめん」が提供されるとその美味しさが評判となり、全国各地に製法が伝わりました。江戸時代に出版された「日本山海名物図会」(1574年)には、「大和三輪素麺名物なり、細きこと糸の如く、白きこと雪の如し、茹でて太らず、余国より出ずる素麺のおよぶところにあらず」と記載されていました。


大神神社 三輪明神 / Mixtribe Photo

 

「手延べ」そうめん

「三輪そうめん」は小麦粉を棒状にした生地を手作業で伸ばして麺を作る「手延べ」製法によって作られています。「手延べ」製法は生地を二本の箸にかけて手で伸ばして麺を作る方法で、麺が乾燥したりくっつき合うのを防ぐ為に食用油を塗って細く長く伸ばしていきます。これを乾燥させたものが「手延べそうめん」として出荷されるわけです。「手延べそうめん」は手間暇がかかり技術も必要ですが、コシが強くて煮崩れせず、歯ごたえも舌触りも良い素麺に仕上がります。また、麺の細さによって呼び名が異なり、製造業者によって色んな呼び方があるのですが、標準的な細さの麺は「誉(ほまれ)」、それより細い麺は「瑞垣(みずがき)」と呼びます。


手延べそうめん / kobakou

 

寝かせた素麺は高級品

「三輪そうめん」は作りたてより1年も2年も寝かせた物が高級品で美味しいとされています。素麺は乾物ですので長期保存が可能ですが、「三輪そうめん」の場合は11月から3月までの厳寒期に製造して、1年もしくは2年以上寝かせたものを高級品として扱っています。1年以上寝かせたものは「古物(ひねもの)」、2年以上寝かせたものは「大古物(おおひねもの)」と呼ばれています。「三輪そうめん」を享保2年(1717年)から製造している「三輪そうめん山本」には「そうめん蔵」と呼ばれる蔵があり、製造した素麺を長期間保存しています。長期間保存する際にはとりわけ「厄を落とす」といわれる梅雨の時期を越す事が重要で、梅雨の時期を越して保存された「三輪そうめん」はその美味しさを増す事になります。梅雨を越す事で素麺が蔵の中で高温発酵して余分な水分が減る事によって、コシがあって茹でても伸びにく風味の良い麺になるというわけです。もちろん、これはそうめん専用の蔵を使用して適切な管理をしているから美味しくなるのであって、一般家庭で保管しても同じ様に美味しくなるとは限りません。

 

そうめんの美味しい食べ方

「三輪そうめん」の様な品質の良いそうめんでも調理の仕方を間違えると美味しく頂けません。そうめんは茹で方が命といわれるほどで、茹でる時は細心の注意を持って茹でなければなりません。とはいっても別に難しい事ではなく、太さや量に応じた適切な茹で時間を守れば良いのです。製品によって麺の太さや水分量が違うので一概にいえませんが、享保2年(1717年)創業の「三輪そうめん山本」の標準的素麺では約1分30秒の茹で時間です。茹でる時にはたっぷりの湯で茹でる事が大切で、湯量が少ないと麺がくっついて固まってしまう事もあります。そして茹で時間をキッチリ守ったら、ザルにあげて流水でしっかりと冷やします。熱が取れたら両手で掴んで流水で揉み洗いをします。しっかりと揉み洗いをする事で麺のぬめりがとれて、コシのある麺になります。後はしっかりと水を切れば出来上がりです。

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